『エリ巻恐竜 ジラース』製作日誌。 |
いましたが、丁度今月からジラースの造型が始まるという事もあり完成まで
のプロセスを画像並びにマテリアルを紹介しながら進めていきたいと思います。
ただここで紹介する内容は全て自己流の極みですので、使える所だけ参考
にされるのがよいかと思います。
さて、二階堂教授になったつもりで『エリ巻恐竜ジラース』を15年、、、いや、
約5〜6ヶ月掛けて一緒に作っていきましょう。(笑)
1)骨組み
弊社の『ウルトラ怪獣シリーズ』はぬいぐるみの1/6スケールで統一しております。
従って中に入るスーツアクターの身長を調べ、同比率で縮小しなければいけません。
ジラースのスーツアクターは言わずもがな中島春雄氏ですが、身長は168cmと
伺っております。
それを1/6に縮小すると28cmですので、インナーフレームをそのサイズで作ります。
スケール、つまり全高30cmとなっており、まさにウルトラマンのサイズなんですね。
(因みに古谷さんの正確な身長は181cmです)
(このジョーク判るかな?)外資系某巨大ネット通販サイトでお安く購入出来ます。
このキットを基本に縮小採寸し骨組み(インナーフレーム)を作ります。〈画像下〉
芯には3mmのアルミ線、胴体部分はアルミホイルを使い適当に肉厚を付けます。
(造型途中でパーツ分割をしますのでそれ程強固に作る必要はありません)
関節部分はエポパテで固め、ポーズ付けをしても位置がずれない様にします。
グレイスカルピーは重量があるので特に二本足で自立する原型等はオーブンで焼くまで
自重変形を起こしやすい訳ですが、この様なスタンドがあれば決めたポーズの歪みも
最小限に抑える事が可能です。
締めて固定し、足元も木ねじで固定します。
2)肉付け
全体のバランスを見ながらボリュームを増していきます。
またディバイダーを使い腕や足の長さが左右同じになるように気をつけます。
この時に参考になるのがモスゴジ製作中の写真で、どこにどれだけのウレタンを貼って
いるか、中島氏の顔がどの位置に来ているか等注意しながら肉付けを進めます。
首から上はこの後の作業とし、この段階では下半身のバランスとデッサンだけに集中
しての作業です。
〈グレイスカルピーが固くなった時の裏技〉
油分が抜けて固くなったグレイスカルピーを復活させるにはスカルピー軟化剤を
練り込む訳ですが、適当な大きさに切ったスカルピーを電子レンジで10〜30秒
ほど暖めると柔らかくなり混ぜやすくなります。
目安は触って人肌より少し温かい程度に抑えましょう。
※加熱し過ぎに要注意。(40秒だと一部硬化してしまいました)
ちょっと怖いという方はグレスカをビニール袋で密閉し、40〜50℃のお湯で10〜
20分ほど湯煎すればいいと思います。
※オーブンでの焼きの目安は130℃で23分〜25分程度。
恐らくこの時点で焼いてしまうのはグレイスカルピーを使う他の原型師さん
とは違うところだと思いますが、これは形が崩れるのを防ぐ為と再度プロ
ポーションを読み込む為の前作業で、画像のように修正箇所をマジックで
チェックしカーヴィングとモデリングを繰り返しディテールを絞り込みます。
※詳細な作業内容はカテゴリ“あしあと(造型日記)”にて随時公開いたします。
〈補足〉
グレイスカルピーの特徴として柔らかいままいつまでもデッサンが出来ると
いう点がありますが、焼いて硬化させた後でも上から簡単に肉盛りが出来る
というメリットも忘れてはいけません。
グルーにはラッカー系シンナーやリキッドスカルピーを使います。
またオーブントースターを使って焼くと温度調整が難しい上に、ソフトビニール
の特性が表れこの後の作業(特にカービング)がやりにくくなりますので、必ず
オーブンレンジ(のオーブン)を使うことをお薦めします。
3)荒削り
カーバイドカッター(画像下)を使い目指す形をどんどん削り出していきます。
ただしヒートガンなどで局部的に硬化させたグレイスカルピーでは固さにムラが出来
上手く削れませんので、オーブンを使い全体が均等になるよう焼いておく訳です。
この後は首と頭を付け胸から上の造型に移り、その上でもう一度バランスを調整します。
カーヴィングとモデリングを繰り返し形を絞り込んでいきますが、この時にどの角度から
見てもバランスが崩れていないことを確認します。
また同時進行で大きなシワとかは少しずつ表現し、身体のラインを詰めていきます。
東宝怪獣は皮膚の下に“肉”があるということです。
これが基本的なプロポーションを決定しますので出来る限り資料を揃え、材質から
柔らかさを考慮しつつ動きに合わせ変形させます。
造型でもこの部分をしっかり作り込まなければ上下のバランスが崩れてしまいます。
とりあえず肉付け作業は体表のモールドが入るまで時間を掛け微調整を繰り返しながら
じっくり作り込んで行く部分なので、先にサイドパーツや頭部の製作に移ります。
4)手の造型
場合もありますが、この後カーバイドバーを使い削り出しますので強度的に問題が無く
造形物が小さい場合はマジックスカルプだけの方が作業しやすいと思います。
足と同様、指にも節がありますので完全硬化するまでにモールドを出しておきます。
手の表情を中心に肉付けをします。
モンドポイント(ダイヤモンドバー)を使います。〈軸径:2.34mm〉
※ガラス工芸用ではなく彫金用の♯140〜♯200でないと削れませんので注意。
※目が詰まったらアセトンで洗った後、真鍮ブラシで軽く擦って清掃します。
全体のバランスを見ながら削ったり盛ったりを繰り返し形を整理していきます。
手の部分はラテックスを袋状にして造型されていますので、アクターの指が入っ
た状態で出来るシワやその厚みにも注意しながらモールドを入れていきます。
ラテックスのただの手袋に人の手の表情が出たと感じていただければ成功です。
この後手首を落として差ししろ部分を作り、長さを調整しながら腕に取り付けます。
方法はプラサフに情景用のサンドを混ぜ筆で調子を見ながら乗せていきます。
5)足の造型
左右同時に進めるのではなく基準となる方(画像では右側)をある程度まで詰め
ていき、反対側はそれに合わせて造型します。
商品では爪は透明レジンになりますので別パーツにして作ります。
それらを原型に盛り込んでいきます。
6)頭の造型
それが決まったら似せる作業のため一度首から切り離し細部を詰めていきます。
この時、口は閉じた状態の方がバランスが取りやすいと思います。
まだ尻尾が短く、首長め、頭少々大きいですがこの辺りは後で修正をかけます。
これから眼球を作るため裏側を彫って行きながら、同時に細かいモールド付け
やデッサンの微調整に入ります。
ちょいと鼻を意識し過ぎたためブタ鼻気味になってしまいました。
この顔のデッサンを詰める作業は日々チェックする度に違って見える場合がある
ので、資料写真や画像と見比べながら原型完成まで何十回と繰り返されます。
※ある程度モールドが入れば細かい修正はマジックスカルプに切り替えます。
(画像のアイボリーホワイト色のパテがマジスカ)
通常半日以上かかる硬化時間を早める為、110℃のオーブンで12分ほど加熱し、
粗熱が取れたら切削作業が可能になるので効率が上がります。
その開けた穴に合わせてマジスカで眼球用と塩ビヒートプレス用の型を取ります。
(この作業は後で解説)
顎パーツも差し替えで二種類用意しますので、全開の顎を先に造型します。
顎が出来れば透明レジンで複製する歯と歯茎を作り切り離しておき、干渉しない
ように舌を作ります。
います。一番目立つ部分ですので終点を決めず納得できるまで詰めていきます。
こちらも数回修正しながら違和感がないよう擦り合わせていきます。
7)プロポーションの修正
ぬいぐるみの比率では画像の感じなのですが、はやりちょっとバランスが悪いので
1/6スケールのミニチュアとしてかっこよく見える様に全体にアレンジを加えます。
この時に過剰に手を加えると全体が崩れますので注意しながら作業を進めます。
バックに白とか黒の板を置くとアウトラインが判りやすいのですが、イメージ的
にはもう少し首が前に倒れ胴体もまだまだ細い感じですのでこれも太く修正。
ぬいぐるみは多少経年劣化はしていても、首から下は八木兄弟によってしっかり
作られたモスゴジですので疎かには出来ません。
ボディの修正をやりつつ、手や背鰭などの細かい部分の造型を行います。
体表に貼られたウレタンのウロコの剥がれは当然ですが、内部を構成するエバーソフト
の経年劣化からラテックスの表面にはっきりとした弛みがあります。
ほぼ全身にウロコモールドが入るので若干細身にしております。
まだまだ弄らないといけない箇所が山積みですが、コダックのカメラは寄りで
撮影すると実際に見るより頭が大きく写ってしまいます。
背鰭が付くとかなり印象も変わってくると思いますが、ここはレンズの歪みを
考慮しながら最終的には肉眼で確かめると致しましょう。
なぜならば本物のぬいぐるみは動いていますので、必ずどこかかっこ悪い角度
があります。しかしミニチュアは全方向しかも間近から眺める事となり、どの位置
から見ても美しく整えておく必要がある訳です。
この作業は目を慣らしながらの細かい修正になりますので、かなりの時間を費やす
事になります。また独自のアレンジも必要となりさながら底無し沼の様な感じです。
しかしこれをやるかやらないかで作品の善し悪しが決定する重要なポイントになり
ますので、ここは焦らず気長にかつ慎重に行います。
まだ途中ですがその成果は前の画像と比較してもご理解頂けるかと思います。
延長させ全体の流れ(バランス)を調整し体表に細かいボリュームを追加しました。
やはり寄りで撮影すると頭が大きく写ってしまいますので見た目で調整。
8)背鰭、尻尾、その他の造型
出しますが、この段階では厚みは考えず形と比率だけに注意します。
背中との接地部分はまだ手を入れません。
細かいモールドや角度、高さ調整はフィット感を出すため本体と同時進行
にいたします。
間着部分にズレ防止のダボを作っておきます。
9)エリ巻きの造型
エリ巻きは11本の支柱で構成されていますので、位置と長さを確認しながら
ドリルで穴を開けアルミ線を接着します。
細かいシワなどは後で行います。
全体にモールドが入ったら細かいシワを拾って更に作業を進めます。
10)歯の造型
国産の瞬間接着剤より硬化速度は若干遅いですが、その分接着力は強力で熱にも強く
白色化もかなり抑えられています。
11)腕のモールド
カッターバーやダイヤモンドビットで削り出します。
Lがマジックスカルプを盛り付けた状態。Rは削りの第一段階終了です。
この後は鱗に体表の皺を意識した変化等を付けながら、盛り付けたり
削ったりの繰り返し作業となります。
鱗のはげちょろも何カ所かに表現しました。
12)完成
足裏にコピーライトを刻めば完成です。
※次は下準備〜基本工作をご紹介する“二階堂教授の異常な愛情[工作編]”を予定。